知っている道、知らない景色

いつもは通り過ぎる角を曲がってみた。
知っている道だけど、最後に通ったのはいつだろう。
ゆっくりゆっくり自転車をこぐ。
見慣れた景色が過ぎていく。
でも、知らない景色も混ざっている。
そこにあったはずの建物が無くなっていた。
そこに無かったはずの建物ができていた。

知っている家。大きくなってた。
知っている駄菓子屋。閉まっていた。
知っている小学校。飼育小屋が新しくなってた。

知っている道なのに知らない景色。
自転車を降りた。
ゆっくりと景色を眺たい。
1歩進むたびに、新しい景色が目に入ってくる。
新しい景色なのに、歩いている道は知っている。

いつもの何倍もの時間をかけて歩いた道は、
知っている景色に知らない景色が自然に溶け込んでいた。
夜道で笑みがこぼれた。なんだかうれしくなった。