ファイナルコール1

刻々と迫る時間
広い空港に響き渡る自分の名前
スローモーションで倒れ行く同僚
助けに戻るか、先を急ぐか
既に客を受け入れなくなった搭乗口…
私は飛行機に…
「ほそかわさん急いで!」。職場で私は質問に答えていました。飛行機に間に合うためにはもうここを出て空港に向かわなければいけない時間が過ぎていました。「ちょっと待ってください!これだけ、これだけ!」私は質問の回答を途中でやめるのが嫌で、冷や冷やするみんなを横目に質問に答えていました。しびれを切らした会社の人は、会社の目の前までタクシーを呼んでくれました。「もうギリギリです!」既に出る準備を終えた同僚。質問の回答をあらかた終えて、すぐに身支度をして会社を出ました。会社の目の前には既にタクシーが待機していて、会社の人は私から荷物をふんだくってタクシーに積み込んでくれました。挨拶もままならないまま、「質問があったら、すぐに私に連絡してください。じゃまた会う日まで!再見!」最後に言えたのはそれだけ。とてもあわただしい最後でした。

空港までの道のりをぶっ飛ばすタクシー。搭乗手続き。チェックイン。既に搭乗ゲート集合の15分前を過ぎているのに入国審査の列に並んでいる私。「早く…早く…」。出発時刻直前までに行けば飛行機には乗れる。飛行機は客を待ってくれる。連絡さえすれば数分の遅れなら大丈夫なはずだ。入国審査をすました時点で出発1分前。そこで放送が流れます。搭乗ゲートが閉まる最後の放送です。「ファイナルコール」。「CAXXX便に搭乗予定の…」放送で呼ばれる自分の名前。入国審査のゲートを出た瞬間、搭乗ゲートへ走りました。きっと近年で一番必死に走りました。

「搭乗口はどこだっ!!どこだどこだっ!くそっ、意外と遠いぞっ」必死に走る二人の日本人。私と同僚の二人は搭乗口に向かって走り続けます。時計を見ると既に飛行機の出発時刻は過ぎていました。「うわっ」同僚の声がして走りながらも振り返るとゆっくりと倒れる同僚。本当にゆっくりゆっくり倒れていく姿が見えました。同僚は足をすべらせ前のめりに転んでいます。これから向かおうとしている搭乗口の番号が見えています。「振り返って戻るべきか、自分だけでも搭乗口に行って乗る意思を伝えるべきか」。私は同僚が立ち上がるのを待ちました。「行くぞっ!!」。エスカレーターの横の階段を2段飛ばしに駆け下り、搭乗口へ到着。しかし…

既に搭乗口のゲートは閉まっていて、そこにあったはずの飛行機が見当たりません…。
(続く)